お知らせNotice

火葬まで1週間!…現代の葬儀事情

こんな記事を見つけました。

火葬場の需要と供給が合っていないという記事です。

お時間のある際に、ご覧になってみてください。

参照元:火葬まで1週間!現代の葬儀事情 : 深読み : 読売新聞オンライン

https://www.yomiuri.co.jp/fukayomi/20180320-OYT8T50097/


首都圏などの都市部を中心に火葬場不足が深刻化している。高齢化社会の進展で年間の死亡数が増える一方、火葬場の数は増えていないからだ。都市部では「人が亡くなってから通夜まで1週間待ち」というケースも出て、遺族を悩ませているという。葬儀関係者の間では、これまで“タブー”とされてきたことに取り組むなど、新しい動きも出てきた。フリーライターの阿部祐子さんが現代の「葬儀事情」をレポートする。

巨大都市・横浜市の決断

 横浜市は1月30日、同市鶴見区に新たな斎場(火葬場)を整備し、2025年度から供用を開始すると発表した。港に近い工場や倉庫などが立ち並ぶ地域に、約8800平方メートルの敷地を確保。火葬炉16炉(予備炉1炉を含む)を備える施設を整備する計画だ。

 全国の政令指定都市の火葬炉数は、人口10万人あたり2.47(17年4月1日現在、民営斎場内の火葬炉を含む)が平均値だが、横浜市は1.45と、同じ神奈川県の相模原市に次いで少ない。そこで、17年から新設に向け、候補地選定の条件などを検討してきた。

 全国の市の中で最も多い約373万人(3月現在)の人口を抱える横浜市。横浜市の将来推計人口では、20年には年間の死亡者数が3万5000人を上回り、65年まで増加が続く見通しという。

 現在、市内には斎場が5か所(市営4、民間1)ある。市営斎場の場合、死亡翌日から火葬当日までの平均の待ち日数は、14年度には3.71日だったが、16年度には4.01日に延びた(「墓地、埋葬等に関する法律」で死後24時間経過しないと火葬・土葬ができないと規定されているため、死亡した翌日から起算している)。希望者が多い正午頃の時間帯では、待ち日数が長くなる傾向があるという。

 首都圏で事業を展開する葬祭会社・東京葬祭(東京都江戸川区)が扱った葬儀でも、火葬場の空きを待ち、「初七日」になってようやく通夜ができた例があったそうだ。今後、各地で火葬炉がさらにひっ迫するのは確実で、横浜市のほかにも新設を迫られる自治体が出てくるかもしれない。

正午前後に火葬希望が集中

都市部での火葬場不足の背景には、死亡者数の増加のほかに、市町村合併による施設の統廃合など「ハード」面、長年の風習など「ソフト」面の両方の理由がある。

 厚生労働省によると、火葬場は2000年度末、全国に7388か所あったが、15年度末には4307か所へと大幅に減少。一方で死亡者数は右肩上がりに増えている。

 一方、「長年の風習」に関して言えば、現在、都市部を含む国内の大半の地域では、通夜、葬儀(告別式)を行ってから火葬するのが主流だ。

 この場合、参列者や僧侶らの都合を考え、葬儀・告別式は午前中、火葬は正午頃という時間帯を選ぶ人が多い。同じ時間帯に希望が集中するため、待ち日数が長くなってしまうのだ。

友引に葬儀をしてはいけない?

葬儀の日取りに対する「こだわり」も、火葬場のひっ迫に拍車をかけている。代表的な例は「大安」「先勝」など「六曜」のうち「友引」の日を避ける、というものだ。

「友引」は「死者が友を連れていってしまう」ので、葬儀にはふさわしくない日だと考えている人も多いのではないか。

 実は、語源をたどると、この解釈は誤りだという。国語辞典『大辞林』(三省堂)によると、六曜の「友引」は「何をしても勝負がつかないとする日」の意味。一方、同じ「友引」という言葉でも、陰陽道では「凶禍が友人に及ぶとする方角」を指すため、両者が混同され、葬儀の日にふさわしくないと考える人が増えたという説がある。

 葬祭業界誌『月刊フューネラルビジネス』の大坪育夫編集長は「(本来の六曜の意味からは)友引に葬儀を営むことは問題ありません。ただ非常識と思う人もいるので避けられる傾向は強いようです」と話す。

「友引開場」で火葬場不足に対応

 やはり、長年の慣習の影響は根強い。友引の日は休場し、火葬炉のメンテナンスに充てる斎場も多いようだ。

川崎市は火葬の受け入れ枠を確保するため、16年から友引の日に斎場を試行的に開場させることにした。16年冬にはかわさき北部斎苑(高津区)で、1日に火葬が受け入れ可能な15枠に対して14枠、17年夏にはかわさき南部斎苑(川崎区)で同じく22枠に対し17枠が埋まった日もあったという。このため、18年度からも友引の日の一部開場を継続していく方針だ。

 前出の横浜市の斎場では、かつて、1月1~2日と友引の日を休場日としており、休場日の翌日には斎場が混雑していた。混雑緩和を図ることなどを目的に、1998年から4斎場(市営3、民営1)のうち、1斎場を輪番で友引の日に開場させるようにした。2001年からは市営の4斎場で同様の輪番制を続けている。

最も火葬炉が少ない政令市では……

 全国の政令市で、人口当たりの火葬炉の数が最も少ない相模原市(3月現在の人口は約72万人)。広域合併で政令市になったが、今も市営斎場は市の東部にある1か所のみだ。

市の担当者によると、葬儀の件数が毎年ピークとなる1月(友引の日を除く)は、希望者が多い『午前11時~午後1時30分』の火葬待ち日数が、17年の場合約5.0日だったという。

 市営斎場の休場日は、年始(1月1~3日)と、年2日程度の施設点検日があり、ほかに月1回、友引の日に火葬炉を稼働させない「休炉日」を設けている。

 17年度の友引の日以外の火葬炉の稼働率は、火葬枠22~23枠に対し、平均約80%に上る。一方、休炉日以外の友引の日は、火葬枠を13枠に減らすが、それでも稼働率は約50%にとどまる。友引を気にしない人、またはやむを得ない事情を抱える人のニーズは存在するようだが、やはり友引の日の葬儀に対する抵抗感を感じる人は多いようだ。

「火葬待ち」の間、遺体は?

 愛する人を失った遺族に追い打ちをかけるような「火葬場不足」。火葬待ちが長引くほど、深刻化するのが遺体をどこに安置するのかという問題だ。

 遺体を個人宅などに何日も安置することはできない。東京葬祭の尾上正幸取締役は「施設にある安置室の利用を検討する遺族が多いです」と話す。

 冷却材として古くから用いられているドライアイスは、遺族が希望した場所に遺体を安置でき、速く冷却できるなどのメリットがある。しかし、部分的にしか冷却できないため、遺体の一部のみが凍ってしまう。遺体に触れた時に違和感があったり、霜が付いたりすることがあり、着替えなどにも時間がかかるという。

 現在、遺体の保管には、保冷庫のような設備を使うことが一般的で、ドライアイスを用いた保管に比べ、遺体も変化しにくく、「安らかなお別れ」ができる。しかし、遺族から「見た目の寒々しさや寂しさが故人に忍びない」との声が上がるようになった。

首都圏に70を超える遺体安置施設を持つ東京葬祭は最近、一部の施設にドライアイス不要のベッド型の安置設備を導入した。「メモリアルベッド」という機器で、昨年9月、生活用品の流通サービスを手掛けるドウシシャ(大阪市)が発売した。「(火葬までの間)遺体が遺族の受け入れやすい姿であり続けることで、遺族の『故人に付き添いたい』という希望もかないやすくなった」(尾上取締役)という。

 メモリアルベッドは、冷却ブロックや放熱用のファンによって、遺体から熱を吸い取って、外部へ放出することで冷やす仕組みだ。細菌の繁殖などを抑える効果があるという。1台約100万円と高価だが、ベッド型で移動もでき、施設側の霊安室に特別な機能を設ける必要はないのもメリットだという。

 遺体はしなやかさを保ち、最期の化粧や着替えもスムーズにできるそうだ。数日保管しても遺体の見た目はほとんど変わらない。ちなみに二酸化炭素の排出量をドライアイスの5分の1に減らせるといい、環境保護にも役立ちそうだ。

各地で「遺体安置施設」のニーズ

 「火葬待ち」が長くなりがちな都市部以外にも、遺体安置施設のニーズは広がっている。背景にはマンションなどの共同住宅に住む世帯が増えるなど、昨今の住宅事情があるようだ。

政府の社会・人口統計体系によると、マンションなど「共同住宅」に住む世帯の比率は、2003年の40%から、13年には42.4%まで上昇している。都道府県別でも、比率が低下しているのは山形など5県のみだ。

マンションなどでは遺体を運び込んだり、送り出したりする際、エレベーターなどの使用を巡ってほかの住人に気を使わなくてはいけない。大勢の人が住むタワーマンションなどでは、管理規約で遺体の搬入を制限されているケースもある。

 千葉県成田市の葬祭会社「成南協心社」によると、同市内では火葬や式場利用までの待機が長引くことはほぼないという。しかし、「住宅事情などで遺体をご自宅に安置する遺族は大きく減っています。今では葬儀までの間、(遺体を安置する)施設の霊安室を利用される人が7割以上です」(内山真一専務)といい、同社でもメモリアルベッドを導入したそうだ。

多死社会と葬送の変容……

火葬場は「迷惑施設」とされることが多い。新設計画が持ち上がると、多くの場合周辺住民の反対運動が起きる。前出の相模原市も市西部で新たな斎場の建設を計画しているが、周辺住民の反発があるとされ、情勢は不透明だ。

 火葬場不足、住宅事情の変化による遺体の保管場所の問題……遺族や関係者の深い悩みの中から「友引開場」が始まったり、「メモリアルベッド」が発売されたりするなどの新たな動きが生まれた。そして今後、葬送のあり方はどう変わるのか。

 最近、都市部では「家族葬」が主流になりつつある。家族や親しい友人、知人だけが参列する小規模な葬儀だ。簡素で低コストに抑えられるイメージが強いが、新しいトレンドも生まれているという。

 フューネラルビジネスの大坪編集長は「(従来の葬儀場ではなく)自宅のような環境で料理もフレンチやイタリアンのコースを提供する施設も登場しています。少人数で故人とゆっくりお別れできると、遺族や参列者の満足度も高いようです」と説明する。

また、遺体を一時的に保管する「遺体ホテル」も近年、東京都や大阪府、神奈川県など都市部に相次いで開業している。遺族用の宿泊室などを備える施設もあり、故人と心置きなく、ゆっくりお別れができると評価する声もある。家族葬や、葬儀を行わず火葬だけで済ます「直葬

ちょくそう

」などにも対応している。

 政府の高齢社会白書によると、日本の死亡者数は40年まで右肩上がりに増え続けると予測されている。さらに、都市部への人口の密集やマンション暮らしの増加といった実情もあり、葬儀の課題を解決する新たなサービスや製品が、今後も登場しそうだ。

 

« お知らせ一覧 »

一番上に戻る